木で作られた病院の模型

クラミジアは、日本国内に100万人以上の感染患者が存在する性行為感染症ですが、抗生物質による薬物療法で治療する事が出来ます。
クラミジアの薬物療法に用いられる抗生物質には、ジスロマックやクラリス及びジェネリック医薬品のアジーなどのマクロライド系に加え、ニューキノロン系のクラビットやテトラサイクリン系のミノマイシンがあります。
特にテトラサイクリン系はマクロライド系やテトラサイクリン系の抗生物質と作用機序が大きく異なります。

マクロライド系の治療薬とは?

ジスロマック250mg

マクロライド系抗生物質は、アメリカのイーライリリー・アンド・カンパニーが1952年に市販化したエリスロマイシンがあります。
現在ではクラリスロマイシンを主成分とするクラリスやアジスロマイシンを主成分とするジスロマックに加え、ジスロマックのジェネリック医薬品のアジーが様々な医療機関で処方されています。

マクロライド系抗生物質は、オキソ酸やアルコールなどが縮合した環状エステルのラクトンの中でも12以上の原子で構成される大環状有機化合物であるマクロライド環を有する抗生物質です。
14員環のクラリスや15員環のジスロマックの他にも16員環のジョサマイシンやロキタマイシンなど数多くの種類があります。
マクロライド系抗生物質は、連鎖球菌や肺炎球菌などのグラム陽性球菌への抗菌効果に加え、クラミジアなどの細胞内寄生菌や細胞壁を持たないマイコプラズマなどにも抗菌効果を発揮します。
そのため、ペニシリン系抗生物質に比べて広い抗菌スペクトラムを有するとされ、ペニシリンアレルギーの患者の代替薬として処方されています。

マクロライド系抗生物質は、伝令RNAの遺伝子情報を読み取ってタンパク質を生合成する細胞小器官リボゾームを構成するサブユニットと選択的に結合する事で抗菌効果を発揮します。
リボゾーム内では、23sリボゾームRNAが含有するアデニンを触媒として、小サブユニット30Sで伝令RNAの遺伝子情報を読み取ると共に大サブユニット50Sで酵素ぺプチジルトランスフェラーゼの作用でタンパク質の原料とアミノ酸を生合成しています。
しかし、ジスロマックやクラリスなどのマクロライド系抗生物質は大サブユニット50Sと選択的に結合しタンパク質の生合成の初期段階であるアミノ酸の生合成を阻害するタンパク合成阻害剤です。

クラリスは、マクロライド系抗生物質初のエリスロマイシンに比べて消化器官の副作用の発生頻度が低くいだけで無く、高濃度で作用させる事により淋菌や肺炎球菌に対して殺菌的な作用を発揮する特徴があります。

ジスロマックやジェネリック医薬品のアジーは、エリスロマイシンのラクトン環に窒素原子をエステル結合させるアジスロマイシンを主成分としています。
そのため、体内の組織間を自由に移動する食細胞に取り込まれ易くなり、感染患部への有効成分の移行性が血中濃度の10倍~100倍程度まで高められています。

ジスロマックやアジーは、少量でも充分な抗菌作用が得られるアジスロマイシンに消化液の影響を最小限にして小腸までたどり着きます。
そして長時間にわたり安定的な有効成分を放出するマイクロスフェアを施す事により、1回の服用でクラミジアの治療を完了出来る様になっています。

テトラサイクリン系の治療薬とは?

錠剤の薬

テトラサイクリン系抗生物質は、抗生物質で最も広い抗菌スペクトラムを持つ特徴がありグラム陽性球菌やグラム陰性性菌及び嫌気性菌だけで無く、三日熱マラリアや熱帯性マラリアを引き起こす原虫に対しても有効な治療薬です。
現在では、胃がんの発生原因の1つとされるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療にも使用される事があります。
テトラサイクリン系には、長時間作用型にミノマイシンやビブラマイシンに加え、短時間作用型のアクロマイシンや中等度作用型のレダマイシンなどの種類があります。

テトラサイクリン系抗生物質は、マクロライド系抗生物質と同様にタンパク質を生合成する細胞小器官リボゾームを構成するサブユニットと選択的に結合する事で、病原の増殖を抑制する静菌的抗菌作用を示すタンパク合成阻害剤です。
作用機序は、リボゾーム内でタンパク質の生合成の為に伝令RNAの遺伝子情報を読み取る小サブユニット30Sと選択的に結合する事で共にタンパク質の生合成を初期段階で阻害し、病原細菌の増殖を抑制する生菌的な抗菌作用を発揮します。

しかし、テトラサイクリン系抗生物質への耐性を発現させる遺伝子情報を有するプラスミドと呼ばれる環状遺伝子を持つ病原細菌が数多く存在しています。
この事から耐性を獲得され易く、1つの病原細菌が耐性を獲得する事により他の細菌も耐性を獲得してしまう問題点があり、最も広い抗菌スペクトラムを持ちながらも実際に処方可能な適応症は限られているのが実情です。

テトラサイクリン系抗生物質は、小サブユニット30Sと選択的に結合する事から人間のリボゾームを構成する小サブユニット40Sと大サブユニット60Sには理論上作用しないとされています。
副作用の発生頻度や副作用の重症化リスクが低く安全性が高い治療薬とされています。

テトラサイクリン系抗生物質は、シミやソバカスの原因とされるメラニン色素の生合成を促進すると共にヘモグロビンの崩壊産物であるヘモジデリン色素を増加させる副作用があります。
大人の場合には皮膚の一部に色素沈着が見られますが、永久歯への生え変わりを待つ子供は永久歯のエナメル質に歯牙着色が発症する事から8歳未満の子供への処方は禁じられている治療薬です。

ミノマイシンは、神経幹細胞から分化し中枢神経系に多く存在するミクログリアの働きを阻害する副作用があります。
また、頭蓋骨内の内圧を過剰に上昇させる副作用もある事から意識障害や運動失調症などを発症する事が極稀にあり、男性に限っては精子の生合成に異常を来す事もあります。

ニューキノロン系の治療薬とは?

DNA

ニューキノロン系抗生物質は、複素環式芳香族化合物の一種であるキノリン骨格にホルムアルデヒドから水素原子を除いたカルボニル基を置換反応させた第1世代のオールドキノロン系に対して、オールドキノロン系抗生物質を改良及び合成した第2世代以降のキノロン系抗生物質です。
この抗生物質は、グラム陰性球菌やグラム陽性球菌に加え、嫌気性菌や非定型菌など幅広い抗菌スペクトラムを持つ治療薬です。
安全性の高い抗生物質として世界保健機関の必須医薬品リストに選定されています。

ニューキノロン系抗生物質は、レボフロキサシンを主成分とするクラビットやシプロフロキサシンを主成分とするシプロキサンに加え、腎機能への負担が少ないアベロックスや小児用の顆粒剤のあるオゼックスなどの種類がある治療薬です。
また、タンパク質合成を阻害するマクロライド系やテトラサイクリン系の静菌的な作用機序とは大きく異なります。
DNAジャイレース阻害作用とトポイソメラーゼIV型の阻害作用により病原細菌に対して殺菌的な作用機序を発揮する治療薬です。

DNAジャイレース阻害作用は、病原細菌のDNA複製や修復に必要なDNAの切断と再結合を担う酵素DNAトポイソメラーゼII型の一種であるジャイレースの働きを阻害します。
そのため、DNAの切断と再結合を阻害すると共に複製と修復も阻害し増殖を抑制するだけで無く病原細菌自体を死滅させる殺菌的な抗菌作用を発揮します。

DNAトポイソメラーゼIV型の阻害作用は、切断と再結合によりDNAの絡みを解消し正常な状態に戻す酵素トポイソメラーゼIV型の働きを阻害します。
そのため、複製後のDNAの絡まりを解消出来ない様にすると共に増殖に不可欠なDNA分配も阻害し増殖抑制効果を発揮します。

ニューキノロン系抗生物質は、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生物質の様に治療に必要な医薬成分濃度を長時間にわたり維持する事で医薬効果を高める時間依存性薬物とは異なります。
患部の医薬成分濃度をより高める事で医薬効果を高める濃度依存性薬物であるだけで無く、病原細菌に耐性を獲得させない医療目的も含め1度に高用量服用する治療薬です。
その為、マクロライド系やテトラサイクリン系に比べて副作用の発生頻度が高く、実際に医薬効果を高める為の過剰服用で頭痛や低血糖及び不整脈などの副作用が発生します。
アメリカ食品医薬局では中枢神経系の副作用の発症を警告しています。